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7. 暗号資産・仮想通貨のトレード税務

イントロダクション

この記事では、特に、頻繁に投機的なトレードを行っていたり、FXや先物のようにレバレッジをかけてビットコイントレードを行っている場合の税務上の取り扱いについてまとめています。

 

個人がトレードする場合

原則は雑所得(総合課税)

個人が、高頻度でビットコインを取引(トレード)する場合、原則として総合課税の雑所得に該当します。

FX(外国為替証拠金取引)や商品先物取引が「先物取引の雑所得(分離課税)」に分類される一方、ビットコインなど暗号資産を対象にレバレッジをかけてトレードする場合(FX、先物取引)には、原則どおり「雑所得として総合課税*」されることになります。

*暗号資産の証拠金取引は、FXと同様に金融商品先物取引等に該当するものの、租税特別措置法の規定により、申告分離課税の対象から除かれていますので、先物取引の雑所得(分離課税)ではなく、消去法的に現物取引と同様に雑所得(総合課税)に分類することになります。信用取引の場合も同様に雑所得(総合課税)になります。

つまり、暗号資産取引に関しては、現時点の税制では、たまに行う取引なのか高頻度で行う取引なのかといった取引頻度の違い、現物取引なのか証拠金取引(信用取引**)なのかといった取引形態の違い、さらには取引所の所在地の違い(国内取引所なのか海外取引所なのか)によらず、すべてが総合課税の対象となっています。

したがって、暗号資産トレードにおいては、すべての取引の利益と損失をあわせて所得計算することになります。

**信用取引…暗号資産交換業者から信用の供与を受けて行う暗号資産の売買をいいます。いわゆる暗号資産FX取引や暗号資産先物取引は、信用取引ではなくデリバティブ取引に該当します。

事業所得になるケース(本業)

ビットコイン(暗号資産)トレードが事業と認められる場合には、その所得は事業所得に分類される場合があります。事業と認められるためには、暗号資産トレードの収入によって生計を立てていることが客観的に明らかであることが必要です。

過去の裁判例では、事業所得の判断基準として、「自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずるもの」と示しており、単に雑所得より有利になるから事業所得にしたいとか、個人事業として開業届を提出すれば認められるというものではありません。

・事業として反復・継続的に取引を行い、かつ独立した意思をもって営まれている場合

・相当の資本を投下してマイニングなどを行っている場合

などが、事業所得として考えられるケースであり、実際にはかなり厳しい要件となっています。

参照)事業所得になるケース(事業付随)

個人事業主がトレード目的ではなく、事業で使用するモノなどを購入するために暗号資産を保有し、それらを購入する際の決済手段として暗号資産を使用した場合、その所得は事業所得に区分されると考えられます。

 

法人がトレードする場合

益金算入

法人が頻繁にトレードを行っていたり、FXや先物のようにレバレッジをかけてトレードを行っている場合には、投資目的の場合と同様、単純に法人の損益(法人所得)に算入することになります。

法人の所得は、個人のように所得をその性質によって10種類に区分することはなく、事業の所得に一本化されています。

 

参考 ①:暗号資産信用取引を行った場合

暗号資産信用取引とは、暗号資産交換業者から信用の供与を受けて行う暗号資産の売買をいいます。資金の供与には金利が、暗号資産の供与には品貸料の授受が発生します。

個人の場合

この暗号資産信用取引の方法により、暗号資産の売付け(買付け)をし、その後にその暗号資産と種類を同じくする暗号資産の買付け(売付け)をして決済をした場合における所得金額は、暗号資産の譲渡により通常得るべき対価の額(売付け価額)*とその買付けに係る暗号資産の対価の額(買付け価額)**との差額となります。

なお、暗号資産信用取引を行った場合の所得については、その取引の決済の日の属する年分の所得となります。

*売付けを行った者が、暗号資産交換業者から支払を受ける金利は売付け価額に含め、暗号資産交換業者に支払ういわゆる品貸料は売付け価額から控除します。
** 買付けを行った者が、暗号資産交換業者に支払う金利は買付け価額に含め、暗号資産交換業者から支払を受けるいわゆる品貸料は買付け価額から控除します。

<例示>信用売りのケース
・ 9月 1日 1BTC を1,000,000 円で売付けた。
・ 9月24日 1BTC を800,000 円で買付けた。
※暗号資産の売買手数料等については考慮していません。

【計算式】
1,000,000 円(売付け価額) - 800,000 円(買付け価額) = 200,000 円(所得金額)

※譲渡原価は、個別法により計算した金額となります。
※その他の必要経費がある場合には、その必要経費の額を差し引いた金額となります

法人の場合

基本的な考え方は個人と同様ですが、法人が暗号資産信用取引を行った場合で、事業年度終了の時に決済されていないものがあるときは、事業年度終了の時に決済したものとみなして算出した利益の額又は損失の額に相当する金額(「みなし決済損益額」)をその事業年度の益金の額又は損金の額に算入することになります。<期末みなし決済>

 

参考 ②:分裂(分岐)やAir Dropにより暗号資産を取得した場合

トレードで保有している暗号資産に分裂(分岐)やAir Dropがあった場合、税務上どのように取り扱われるのでしょうか?

暗号資産の分裂(分岐)により新たに誕生した暗号資産を取得した場合、分裂(分岐)時点において取引相場が存しておらず、同時点においては価値を有していなかったと考えられますので、その時点では課税対象になりません。

また、Air Drop(無料で暗号資産やトークンが配布される暗号資産のプロジェクトのことで、その目的は暗号資産の知名度向上のための一種の広報活動)で、上場前の取引相場のないものを受け取った場合も、取得時点においては価値を有しておらず課税対象にはならないと考えられます。
しかし、取引相場のあるものを受け取った場合は、経済的価値があるため、その時点における時価が課税対象になると考えられます。

 

参考 ③:ICOに投資を行った場合

ICOには、IPOのように投資企業の議決権や優待制度を受ける権利が一切認められないため、税務上は、あくまで暗号資産(トークン)の単なる売買であると考えることができます。そのため、トークン購入時と売却時に所得が発生する場合があります。

暗号資産でトークンを購入した時点

ICOに投資するときは、ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産で出資することが多いようです。暗号資産を出資してトークンを購入することは、暗号資産と暗号資産の交換に該当しますので、その時点で出資した暗号資産の利益が発生します。

新規発行のトークンを売却した時点

新規発行されたトークンが無事に上場し、市場価格がついたとします。市場価格がついた後に、そのトークンを売却し、法定通貨に換えるか、他の暗号資産に換えると、その時点で課税関係が発生します。

 

なお、イーサリアムなど他の仮想通貨の考え方も同様です。

 

■参考

パーソナル・ニュービジネスの運営と税務: ネット&ファンドビジネス編

パーソナル・ニュービジネスの運営と税務: ネット&ファンドビジネス編

 

 

■YouTube


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