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不動産所有法人の設立の税務

【準拠:平成30年4月1日現在法令等】

不動産を活用した節税法は以前からあります。

ただ従来の管理型法人、サブリース型法人だと思ったほど利益(所得)は法人へ移転できませんでした。

そこで、個人所有の賃貸不動産を法人に売却し、不動産所有法人を設立する方式をお勧めします。

この方式なら100%個人から法人へ所得を移転することができます。

ただし、設立には下記のようにメリット・デメリットや注意点などがありますのでご参考ください。

■メリット
①100%法人へ利益(所得)を移転できるので、個人課税所得が移転分だけ減らせる。
②今後法人の実効税率低下が期待できるので、法人課税の方が有利になる。
③相続財産が不動産から自社株に変わり、財産管理・把握が簡単になる。

■デメリット
①不動産移転コストがかかる。
通常、建物の移転には次のものがかかります。
・登録免許税⇒固定資産税評価額×2%
・不動産取得税⇒固定資産税評価額×3%
・譲渡所得税⇒通常、帳簿価額により売却だと所得なし⇒0
・消費税⇒個人が課税事業者だとかかる∴帳簿価額(課税売上高)×8%
・司法書士報酬⇒5~10万円程度
・税理士報酬⇒譲渡所得の申告で5~10万円程度

②賃貸契約書の変更が必要となる。

③建物移転後3年以内の相続では、財産評価額が高め(相続税評価額ではなく、取得価額評価)となってしまう。

また、個人での不動産経営の法人化には次のような点に気を付けるとよいでしょう。

■移転不動産の選定方法
基本は、建物のみ法人へ移転します。

具体的には、1棟建てマンション、アパートの建物部分です。

※留意点
①資金があれば、土地も同時移転するとよい。
②投資利回りが良い物件を選んで移転する。
③建物の帳簿価額の低い物件を選んで移転する。
④区分所有マンションは、建物部分と敷地利用権が一体なので建物のみの移転は不可である。
⑤銀行借入金があるため抵当権が建物に設定されている場合は、銀行に相談し外す又は法人に承継する必要がある。

■注意点
①借地権の問題が生じます。
⇒法人が「無償返還の届出書」を税務署に提出し回避する。
②法人が通常地代を支払います
⇒固定資産税相当額の3倍程度が目安です。

このため、個人地主側で地代収入が発生してしまいます。

■具体的な移転コスト試算
(例)アパート建物のみの移転(建物固定資産税評価額3千万円のケース)
・登録免許税⇒3千万円×2%=60万円
・不動産取得税⇒3千万円×3%=90万円
・譲渡所得税⇒通常、帳簿価額により売却だと所得なし⇒0
・消費税⇒帳簿価額(課税売上高)3千万円×8%=240万円 ㊟該当者のみ
・司法書士報酬⇒5万円
・税理士報酬⇒譲渡所得の申告で5万円

計算すると消費税を除き合計で160万円となります。

(該当者は少ないと思いますが、消費税課税事業者の場合は合計で400万円となります。)

移転コスト以上の節税が将来的に期待できれば、法人設立を検討することになります。

パーソナル・ニュービジネスの運営と税務: 太陽光&不動産ビジネス編

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